■ぼくらの基地はヨシの中■ □side-J□
あの火事から数日後。
「結局、火事は不審火ってことになったってな」
朝の会が始まる前、登校してきたぼくに、イクヤがそう教えてくれた。
火事のすぐ後、ヨシ野原を見に行ったけれど、すっかり燃えてしまって、ただの空地になっていた。ぼくらの基地の面影なんて、どこにも残ってなかった。
イクヤの話だと、この火事を機に工事が入って、パークゴルフ場がつくられるらしい。
何となくぼくとイクヤが寂しい気分になっていると、音を立てて勢いよく引き戸が開いた。
「おっはよ! なんだよ、元気ないな」
入ってくるなりぼくらにそう言ったハヤトに、ぼくは少しムッとして返す。
「基地が燃えちゃったばっかりなのに、元気になんてなれっこないよ」
するとハヤトはちょっと考えて、ぼくとイクヤを手招きした。
「そのことなんだけど、お前ら、今日暇?」
声をひそめてそう言ったハヤトに、ぼくとイクヤは思わず顔を見合わせる。
「暇だけど……今度はなに?」
この流れに覚えがある気がして、ぼくは慎重にハヤトに尋ねた。
するとハヤトは太陽みたいににかっと笑って、ぐっと親指を立てて見せる。
「ちょっと冒険に出かけようぜ、新しい基地を見つけに!」
ぼくとイクヤは予想通りの言葉にふっと笑みをこぼした。
「オッケー、どこまでも付き合おうじゃないの」
「さっすが! お前らならそう言ってくれると思ってたぜ!」
ハヤトが前と似たようなことを言ったので、ぼくとイクヤは思わず笑ってしまった。ハヤトがきょとんとした顔でぼくらを見る。
「何笑ってんだよ」
「なんでもないよ。ねぇ、どこに冒険に行くの?」
「そうだな……北の川向こうなんてどうだ?
未開拓っぽい感じで冒険っぽくね?」
「いいね、そうしよう!」
そんな感じで、ぼくらは始業のチャイムがなるまで、この先の冒険について話をした。
このまま冒険に出かけて、また新しい基地をつくったとしても、ぼくらはこの夏の小さな物語を、この先もずっと忘れないでいられるだろう。
そっと心を覗いてみれば、いつだってぼくらの基地は、あの広がるヨシの中にあるのだから。
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