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■ぼくらの基地はヨシの中■  □side-C□

 それから、ぼくらは毎日のように秘密基地に集まっては遊ぶようになった。
 初めはハヤトが作った道を覚えるために、基地の中で鬼ごっこをした。意外なところで道がつながっていたりして、鬼とはち合わせることもよくあった。
 道を覚えてくると、今度は新しく道を作った。
「お前らにも部屋がないとな」
 ハヤトはそう言うと、少しずつヨシをふみ折って、固めて道にしていった。その道の先に、ヨシをふみ固めた空間を作った。
「うっし、ここがアキの部屋な!」
 ぼくは自分の部屋が持ててうれしかった。自分の家では、ぼくはお姉ちゃんといっしょの部屋だからだ。自分だけの部屋っていうだけで、ちょっと大人になった気分だった。
 イクヤにも同じように部屋ができると、ぼくらは、いかにそこを居心地のいい場所にするかを考え始めた。
「ユーアイで段ボールもらって、下にしくか」
 そんなイクヤの提案で、ぼくらは近所のスーパー・ユーアイから、いらない段ボールをもらってくると、自分たちの部屋にしきつめた。
「おぉ、座ってもおしり、痛くない!」
「これで心おきなくあぐらがかけるな」
 イクヤが満足そうに笑った。ぼくは、急に雨が降っても大丈夫なように、段ボールで屋根をつくっておいた。遊んでる途中に雨が降ったら、ぼくの部屋が避難場所になった。
 そうやってぼくらは、放課後と休日のほとんどを秘密基地で過ごした。もちろんこの基地のことは他のだれにも、親にさえ言わなかったし、人前でしゃべらないようにもしていた。服をよごして帰ることが多くなって、お母さんにはよく怒られるようになった。
「あんたはまた遊びに行って……少しは勉強しなさい!」
 ぼくはそう言われるたびに、耳をふさいだまま、二階の部屋に直行した。そしてふとんにもぐって、明日はなにをして遊ぼうかと考えるのだった。

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