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■ぼくらの基地はヨシの中■  □side-F□

「先輩から基地を取り返そう!」
 次の日の朝、ぼくはハヤトとけんかしていたことも忘れて、二人にむかってそう言った。
 イクヤとハヤトは呆気に取られた様子で顔を見合わせる。ハヤトがあきれたようにため息をついた。
「何を言い出すかと思えば……」
「アキ、昨日のでわかったろ。先輩には……」
「いいから、とりあえず聞いてよ!」
 続くイクヤの言葉をさえぎって、ぼくはゆうべ思いついたアイデアを二人に話した。
 ヒロ先輩は確かに強い。体だってぼくらより大きいし、力だってぼくらの何倍もつよい。
 でも、たたかう方法は、なにも力だけじゃない。
 ぼくがアイデアを話すうちに、疑うようだった二人の顔も、だんだんと輝いてきた。話し終わる頃には、二人ともすっかり乗り気で、作戦についてしきりに討論している。
 前に何かの本で読んだけど、キューソ、ネコをかむってやつ。キューソがなにかはわからないけど、ぼくらはキューソで、これから先輩ネコをかみに行くのだ!


「ねえ、聞いた? 公住のとこの空き地に、幽霊が出るんだって!」
 それから数日後、ぼくら五年生の間では、そんなうわさがまことしやかに流れていた。
 なんでも、ぼくらが秘密基地としていたヨシ野原に、幽霊が出るというものらしい。
 すっかり帰りが遅くなったうちの学校の生徒が、街灯もなく真っ暗になったヨシ野原の間の道を通ると、ヨシの間から何かに見られている気がする。何だろうと思って暗がりに目をこらすと、細いヨシの間を、なにやら光る玉――人魂がほわほわと浮かんでいた、というものらしい。
 隣の席で二人の女子がきゃっきゃと騒いでいるのを聞いて、ぼくたちはにやりと笑みを交わした。
 おわかりだと思うが、そのうわさを流したのは、もちろんぼくらである。
 この調子だと、先輩たちのところにうわさが広まるまで、そんなにかからないだろう。このうわさが先輩たちの耳に入ったなら、あのみえっぱりの先輩のこと。必ず、行動にでるはずだ。
 ぼくらは互いにうなづきあうと、それぞれの席に戻った。
 準備はちゃくちゃくと整ってきている。

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