kazameigetsu_sub-signboard はじめに メンバー 文章 イラスト 手仕事 放送局 交流 リンク

■ぼくらの基地はヨシの中■  □side-A□

「なぁ、お前ら……秘密、守れるか?」
 ある夏の暑い日。友達のハヤトがやけにこっそりとぼくらにそう聞いたのは、帰りの会が終わって、みんなが教室を出始めたころだった。
 ぼくは一緒に帰ろうとしていたイクヤと顔を見合わせて、やけに真剣な顔のハヤトに聞く。
「秘密ってなに?」
「守れるか? 守れないのか?」
 ハヤトは答えないで、先の質問をくり返した。ぼくが答えに困ってイクヤを見ると、イクヤもやはり、ふしぎそうな顔をしていた。
 ハヤトはぼくらの答えをひたすらだまって待っている。イクヤがぼくにうなづいたから、ぼくもハヤトに対してこくりと一つうなづいた。
「守る、約束するよ」
「よし、お前らならそう言ってくれると信じてたぜ。かばん置いたら小グラ集合な」
 ハヤトはぼくらの返事も聞かずに、さっさと一人で教室を出て行ってしまった。ぼくとイクヤはお互いに首をかしげて、とりあえず帰ろうと、すっかり人のいなくなった教室を出た。


 イクヤと別れて重たいかばんをうちに置いてから、ぼくは歩いて集合場所の小グラに向かった。
 小グラっていうのは、小グラウンドって呼ばれてる公園みたいなところだ。奥の方には小さな山があって、前側の平らなところには、ぼくらが“がったん”と呼ぶ箱ブランコとか、色んな遊具が置いてある。
 ぼくが小グラについた時には、もうすでにハヤトがイクヤと“がったん”に乗って遊んでいた。
「おう、遅かったな、アキ」
 “がったん”のいすに座っていたイクヤが、ぼくに気付いて声をかけた。ぼくはごめん、と謝って、“がったん”にかけ寄る。
 “がったん”を立ちこぎしていたハヤトは、背もたれから飛び降りると、近寄ったぼくを追いこして、
「よし、行くぞ! こっちだ、こっち!」
と、大げさに手をふった。
 ぼくはよく分からなくて、“がったん”から降りたイクヤを見た。イクヤはただ、おおげさに肩をすくめるだけだ。
「ねぇ、ハヤト。どこにいくの?」
 ぼくの質問に、ハヤトは楽しいことが先に待ってる時のように、にやりと笑った。
「いいから。だまっておれについてこいよ」
 そう言ってさっさと行ってしまうハヤトの後を、ぼくとイクヤはあわてて追いかけた。

【戻る】 >side-B
Copyrights © 2004-2019 Kazameigetsu. All Right Reserved.
E-mail:ventose_aru@hotmail.co.jp
inserted by FC2 system