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■File:2 乙女のピンチ!? ストーキングされる女子高生を救出せよ!■ □side-B□

 久々に活気づいたトラシュー部の部室内。依頼者用のパイプ椅子に、里奈は緊張した面持ちで座っていた。
「ストーカー?」
 話を聞いていた幸がおもむろに尋ねる。
 里奈はこくりとうなずくと、最近のことを思い出すようにぽつり、ぽつりと話し始めた。
「私、帰り一緒の友達がいなくて、いつも一人で帰ってたんです。そしたら、一週間前ぐらいから、後ろに誰かの視線を感じて……」
「視線?」
 今度は孝也がパソコンを打つ手を止めて聞いた。里奈はまた一度、こくりとうなづく。
「物陰に誰かいるんです。隠れて、じーっと私のこと見てるの。声をかけると逃げてしまうし……」
「ふむ……その視線はどこの辺りから感じる?」
「多分…学校出てすぐくらいから……」
「なるほどな。サチ、どうする?」
 幸は顎に手を当てて何やら考えていたが、孝也に聞かれてひとつ手を叩いた。
「リナに心当たりはないらしいし、とりあえず俺らも二手に分かれるか」
「それがいいだろうな。さ、割り振れ」
 珍しく、孝也が幸に丸投げした。幸は孝也の無言のプレッシャーに呻き声をあげる。
「うぅ、頭使うの苦手なんだよ……とりあえず、俺、トキ、アキは二人ずつローテーションで彼女の護衛。今のとこストーカーが出るのは帰りだけだから、帰り道彼女を送ること。タカとヒナとユイは、手分けして情報収集を頼む」
 それそれがうなづいて同意を示した。幸は最後に、里奈に向けてにかっと笑ってみせる。
「トラシュー部に来たからにはもう大丈夫だからな、安心しろよっ!」
「よ、よろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げた里奈にうなづいて、幸は指示を出した。
「じゃぁ、今日はトキとアキに護衛、任せるな。よろしく頼むぜ」
 アキはうなづくと、里奈を伴って部室を出た。


「あの、高崎くん……」
 部室を出て、少し歩いた時だ。おずおずと話しかけた里奈の言わんとするところがわかって、明良は苦笑を浮かべた。
「あはは、驚きました? こんな部活があるって知らなかったでしょう」
「うん……びっくりした」
 心底驚いたらしい里奈は、明良と二人になったからか、少し緊張が和らいでいるようだ。時鳴は気を使っているのか、二人の数歩後ろをついてきていた。
「会ったばっかりで信用できないかもしれないですが、皆いい人ですよ」
「うん……そう思う」
 校門を出た。里奈の家はここから歩いて十五分程度らしい。
 後ろからついてくる時鳴の表情に変わりはなかった。今日はもしかしたらストーカーはいないかもしれない。
「ねぇ、うしろのひと……」
「あぁ、トキ先輩ですか? 大丈夫、何かあったら真っ先に気づいて動いてくれますから」
「そ、そっか……」
 やはり不安をぬぐい切れないのか、里奈は少しびくついていた。明良は何とか安心させようと、そっと里奈の手をとる。
「っ!?」
「あ、すいません、また震えてたので……大丈夫ですよ。自分も、トキ先輩も、ほかの皆さんもいますから」
 柔らかく微笑んだ明良に、里奈は頬を赤らめてうなづいた。

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