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■File:3 トラシュー部の危機!? テストと梅雨を撃退せよ!■ □side-C□

 早速トラシュー部のメンバーは、部室は各々好きなものがあふれていて勉強が手につかない、と勉強道具を持って図書室へと移動した。
 六人が他愛もない話をしながら重たい両開きの扉を開けると、目の前にいた図書委員のけだるげな視線にぶつかった。
「……来たか」
 カウンターの奥に座っていたその図書委員は、面倒くさげにぼさぼさの頭をかきむしって、トラシュー部の面々に向きなおった。
「あんたら、トラシュー部だな?」
「そうだけど……何か関係あんのか?」
 幸をはじめとして各々が訝しがって図書委員を見ると、図書委員はやる気なく告げた。
「あるさ……生徒会からのお達しだ。『トラシュー部は図書室の平穏を乱し、他の生徒の勉学を妨げる可能性が濃厚なので図書室に立ち入り禁止』……だとよ」
「はぁっ!?」
 思わず声を荒げた幸、明良、結衣に対して、図書委員は渋い顔で人差し指を口に当て、「しーっ」と注意する。
「それはどういうことだ?」
 後ろから、孝也が声のトーンを落として図書委員に尋ねた。
「どういうことって言われても、そういうことだよ…今日の放課後急に言われてな」
 トラシュー部との応対すら面倒くさそうな図書委員に、困り顔で結衣が訴える。
「生徒会の言うこともわかりますけど、私たちの勉強する権利はどうなるんですか?」
「そんなこと言ったって、背いたら図書の予算減らすっていうからよ……こっちも死活問題なんだ、悪ぃな」
「んなっ……!!」
 思わずかっとなった幸を、後ろから時鳴が肩を掴んで牽制する。
「トキ!」
 幸の抗議の声に、時鳴は黙って首を振るだけだ。
「ここであなたが暴れたってどうしようもありませんわよ」
 時鳴の代わりに雛子が呆れて溜息をついた。それでも暴れようとする幸の頭を、孝也がぱしんと叩く。
「少し落ち着け……ほら、迷惑になっている」
 ハッとして周りを見渡すと、不快そうな図書委員の顔と、何事かと顔をのぞかせる閲覧席の生徒の視線にぶつかった。一瞬にして図書室が騒然となる。
「とりあえず出るぞ。トキ、頼む」
 さっさと出て行く孝也に続いて、雛子、結衣、明良、そして時鳴に引きずられて幸が図書館から出る。
「まったく……まさに生徒会の言っていた通りになったな」
「何で止めんだよ、止めんな!!」
 時鳴に抑えられていなかったら今にもとびかかりそうな勢いの幸に、孝也はいたって冷静にでこピンをした。
「馬鹿かお前は。悪いのは図書委員じゃなくて生徒会だ。図書室でお前が暴れて何になる」
「うっ……」
 言われてみれば確かにそうで、幸は押し黙った。あのムカつく金城がいるなら別だが、図書室にいる生徒は誰もこのことに関係ない。
 時鳴に放された幸は、申し訳なさそうに視線を伏せた。
「……ごめん。皆もやな目で見られたよな」
「気にしないでください。この数カ月で大分慣れましたよ。ね?」
 あっさりと笑った明良に、結衣がうなずく。周りも非難するというよりは呆れ交じりという感じで、ため息交じりに笑みを浮かべていた。
「馬鹿なのは昔から知ってるさ。……さて、ほかの場所も当たってみるか?」
 孝也の提案に、幸は嬉しそうに笑って 元気よくうなづいた。

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