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■File:4 武士の魂! 学祭演劇を成功させよ!■ □side-A□

 七月になり、すっかり夏らしくなったとある日。私立明鐘高校は、いつもとは違う賑わいを見せていた。
 学校の一大イベント、学校祭こと明鐘祭まであと一週間。生徒達はその準備に追われ、賑やかに作業をしていた。
 そしてそんな作業の合間を縫って、トラブルシューティング部ことトラシュー部のメンバーは、放課後の部室に集まっていた。
「よーし、今日は学祭について会議すっぞー」
 部長である藍原幸が珍しくそんなことを言ったので、今年入部したばかりの一年生、夢野結衣と高崎明良はきょとん、と顔を見合わせた。
「あの……この部活でも事前に会議とかするんですね」
 あっけに取られながらそう言った明良に、幸はあからさまに渋い顔をする。
「そりゃ、俺らだって会議ぐらいするぞ……」
「あ、いや、そうなんですけど……」
 どうもこの部活にはそういう印象がなく、明良は目をそらして頬を掻いた。結衣も同じ気持ちだったらしく、あはは、と愛想笑いでごまかしている。
「さて、我々トラシュー部なんだが、学祭ですることは主に二つだ」
 幸の隣に座っている潮見孝也が、淡々と説明を開始した。
「一つは、学内でトラブルが起こっていないかの見回り。もう一つは、起こったトラブルの迅速な解決だ。見回りのシフトを決めたいから、各自学祭時の拘束時間が決まっているなら教えてくれ。以上だ」
 孝也の説明に全員がうなづいた。
「他に何かあるか?」
 孝也が尋ねると、珍しくその隣ですっと手が上がる。
「トキ、何だ?」
 手を挙げたのは、三年生の羽柴時鳴だった。時鳴は神妙な面持ちで話を切り出す。
「近頃、緑色のブレザーの学生が色々な学校の学生相手に派手にやっているらしい。先日、拙者も絡まれた……追い返したが。少し注意しておいた方がいいのではないだろうか」
「ふむ、緑のブレザー…工業北の生徒だろうな。今年はガラの悪いのが多いらしい……確かに警戒しておくべきだ。情報どうも、トキ」
 時鳴は無言でうなづいた。早速孝也が手元のノートパソコンを開いて何やら調べ始める。
「本日はこれで終了ですの?」
 黙ったままの孝也を見て、いつになくそわそわとしていた二年の櫻井雛子が尋ねると、孝也はその手を止めてうなずいた。
「あぁ、今日は連絡だけだ」
「では、わたくしはこれで失礼しますわ。少し忙しいんですの」
「確か、ヒナのクラスって演劇だっけ? お前なんかすんの?」
 幸がにやにやしながら尋ねると、雛子は明らかに不機嫌になった。
「あなたには関係なくってよ!」
 力任せに手元の茶卓を幸に投げつけて、雛子は鞄を手に取った。
「ってぇ〜…物投げんな、物!」
「うるさいですわね、元はといえば……!」
 雛子が幸に怒鳴りながらドアノブに手をかけたその時。
「すみませんっ!!」
 向こう側から急にドアが開かれて、雛子はびっくりしてあとじさった。
「あ、櫻井さん!」
 ドアから顔をのぞかせたのは、一人の女子生徒だった。その顔を見て、雛子が驚いた声をあげる。
「桐野(きりの)さん! どうしましたの、そんなに慌てて……」
「よかったぁ、探してたの…って、そうじゃなかった! 大変なの! 一緒に来て!!」
 慌てふためく女子生徒に、雛子はトラシュー部の面々と顔を見合わせた。

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