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■File:4 武士の魂! 学祭演劇を成功させよ!■ □side-C□

「おー、やってるやってる」
 次の日の放課後、さっそく時鳴と雛子以外のトラシュー部の面々は、雛子のクラスの演劇練習を覗きに来ていた。
 雛子にばれたら追い出されてしまうので、練習場所となっている雛子のクラスの教室のドアの隙間からそっと覗く。
「あの…いいんですか? こんなことして……」
 昨日、雛子は今まで見せたことがないほどの剣幕で、練習を覗きに来るなと念を押していた。良心がとがめる明良は幸にそう尋ねるが、幸は軽く笑い飛ばす。
「いいのいいの。見回りの順番によっちゃ本番見れないかもしんねーし、ヒナもただ恥ずかしいだけなんだって」
 明良はまだ納得しきれていない顔で、物言いたげに幸を見たが、幸はドアの隙間にさっさと目を向けてしまった。
 中からはセリフであろう。人の喋る声とカセットから流れるBGM、効果音などが聞こえてくる。
「どれどれ、ヒナとトキは……お、出てきた」
 興味津々に隙間からのぞく三人に、明良は溜息をついて、しかし自身も好奇心には敵わず、結衣の隣からそっと中を覗き込んだ。
 練習風景は、それはもう酷いものだった。
 自身で出来ないと言っていただけあって、時鳴の動きはどこかぎこちない。すかさず監督である奈津から叱咤が飛ぶが、それに時鳴はますます固くなって、大道具に躓いたりなんかしている。そこに普段の時鳴の冷静さ及び隙の無さなど微塵も見られない。その脇では雛子が台本片手に呆れたような溜息をついていた。
 これをドアの隙間から垣間見た四人は思った。……不安だ。
「……トキ先輩、大丈夫でしょうか……」
「うーむ、失敗だったかな」
 孝也が不安そうに眼鏡を押し上げた。これで当日までに間に合うのだろうか。それまでに時鳴が倒れないかも心配である。
「それにしても、こんなトキ先輩なんて滅多に見れないですね。珍しいもの見れた気がします」
 なぜか嬉しそうに言う結衣に、幸がにやりと意味ありげな笑みを浮かべた。
「いやいや、トキの本当に弱った姿が見れるのは、あいつのかた……」
「……何をしているんですの?」
 怒りを押し殺した問いかけに、話に夢中になっていた四人はびくりと肩を震わせた。振り向いた先には、怒気たっぷりの表情でこちらを見ている雛子がいる。
「ひ、ヒナ……何しに行くんだ?」
「休憩ですので飲み物を買いに。で、何をしているんですの?」
 有無を言わせない口調で雛子は問うた。本気で怒っている。
「あー、ちょっと、散歩を」
「あら、そうですの……」
 そう言って雛子は優雅に笑った。しかし――目がまったく笑ってない。
「ケン、アルフ!」
 雛子が呼ぶとほぼ同時に、屈強な体の男二人が教室から出てきた。
 四人は雛子のSPによって、あっけなく教室棟からつまみだされたのだった。

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