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■File:6 結衣の退部!? 呪いに脅える男子生徒を守護せよ!■ □side-C□

「うーん……」
「その日から、ユイ殿は一度も部活に来ていないな」
 そこまで思い返し、腕を組んでうなった幸に、時鳴がそう付け加えた。結衣が普段、これだけ部室に顔を見せないのは珍しいことだった。
「案外、本当に黒魔術同好会でも立ち上げてしまうんじゃありませんの?」
 辛辣な口調でそう言ったのは雛子だ。ヒナ、と、諌めるように幸が雛子を呼ぶ。しかし雛子の口は閉じず、ため息交じりに言葉を続けた。
「ま、それならそれで仕方ないですわ。こんな部活ですし」
「お前、自分の部活だろうが」
「訂正しますわ。こんな部長ですし」
「んだとこの!」
「なんですの!?」
 ぎゃあぎゃあと喧嘩を始めた二人にそっと溜息をついて、時鳴がぽつりとつぶやいた。
「……アキ殿は大丈夫だろうか」
 その呟きに、二人はぴたりと喧嘩をやめた。雛子が不機嫌に時鳴をにらみつける。
「そんなこと言ったって仕方がないじゃありませんの。大体、アキもアキですわ」
「おい、ヒナ」
「ユイがいないからってなんですの。赤子じゃないんですのよ? もう少ししっかりしてもらわないと……」
「ヒナ!」
 まくしたてる雛子をさえぎるように幸が怒鳴ったその時、ガチャリと音を立てて部室のドアが開いた。
「…ただいま戻りました」
「お、おう」
 明良はぞうきんを片手に入ってくると、無言でこぼしたお茶を拭き始めた。気まずい空気が部室内に流れ、三人はどこか落ち着かない様子で、明良がお茶を拭くのを黙って見ていた。
 一通り机と床を拭いた明良は、雑巾を洗いに再び部室を出て行った。一瞬、ほっとしたような空気が流れた。
「……ヒナ、お前言い過ぎ」
「…本当のことですわ」
「ヒナ殿」
 すねたようにそっぽを向いた雛子に、時鳴がそっと呼びかけた。その声に含まれる諭しに、雛子は意地になってむすっとしていたが、急に乱暴に立ち上がった。
「……シャツ、着替えてきますわ」
 むすっとしたまま一言だけそう言って、雛子は足早に部室を出て行った。そんな雛子の様子に、幸は苦笑しながら時鳴と顔を見合わせた。

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