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■File:6 結衣の退部!? 呪いに脅える男子生徒を守護せよ!■ □side-G□

 次の日も空は綺麗な青だった。中庭の黄金色に色づいた木々を眺めながら、その日も結衣は彩、小夜子、春美と共に、放課後の中庭を訪れた。
「あの、ユイさま。今日は是非、自分たちにユイさまの扱う術を教えて欲しいのですが」
 ベンチに腰かけてすぐに、彩が期待で瞳を輝かせながら結衣にせがんだ。三人は、占いのような簡単で危険のないものは既に教えてもらっていたが、まだ結衣の使う黒魔術については教えてもらったことがなかった。小夜子と春美も、期待のこもった目線を結衣に向けた。
「でも、黒魔術は使い方を間違えると危ないから……」
 ためらいがちにそう言って断ろうとした結衣に、しかし彩は一歩も引かなかった。
「大丈夫ですって! 簡単なのでいいんです、お願いします!」
 あまりに強く彩が言うので、渋い顔で断っていた結衣も最終的に折れた。
「じゃ、ちょっとだけだよ? 絶対に悪い事に使わないでね」
 結衣が真剣な顔で念を押すと、三人はこくりと大人しくうなづいた。それから、リスクの少ない術の方法を教えた。それは『不運を呼ぶまじない』で、相手の運を少し下げるといったものだったが、三人は真剣にその方法を聞いてメモを取っていた。
「そういえば、ユイさまはどうしてこの術を体得したんですか?」
 術の講義がひと段落した所で、小夜子が結衣にそう尋ねた。結衣の脳裏に、明良が事件に遭った幼い日の事がよみがえった。
「んー……大切な友達を守るため、かなぁ」
「友達を守るため? だって、呪いの力なのに?」
 春美が小夜子の隣から身を乗り出して尋ねた。
「それはね、使い方次第なんじゃないかな」
 無邪気な春美にそう返して、結衣は目を閉じた。
「わたしはね、大切な友達を守れなくて、傷つけちゃったことがあるの。もうその子の事を傷つけたくないから、次は守りたいから、その方法を探したんだ。それが占術と黒魔術だったの」
 その術に出会った時、結衣は、これで自分の大切な人が守れると思った。実際に何度も危ないところを救われている。それでも。
「占いや魔術が出来ても……傷つけちゃう時もあるね。難しいなぁ」
 四日前に見た明良の表情を思い出して、結衣は自嘲気味にほほ笑んだ。そして思う。わたしは、どうしたいんだろう。
「ユイさま……」
「大丈夫ですよユイさま! わたしたちがいるじゃないですか!」
 考えて黙りこくってしまった結衣に、小夜子と春美が励ますようにそう言った。
 そんな風に気を遣ってくれたことが嬉しくて、結衣は、はにかむように笑った。
「ありがとう」
 自分も明良のように、新しくこの三人と友達になるのも悪くないのかもしれない。
 結衣がそう思いながら小夜子と春子と話をしている傍らで、彩はずっと無機質な表情で何かを考えていたのだった。

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