■当らない占い師 シナリオ1〜母と薬〜■ □side-G□
マーザとの壮絶な追いかけっこから数日後。
この日も、その日と同じ、穏やかな晴天だった。
太陽は穏やかな光を地上に送り、風は穏やかに頬を滑っていく。草がかさかさと乾いた音を立て、その上に寝転がっていたタムスは気持ちよさそうにあくびをした。
ノートルはこの日も店のカウンターに寄りかかりながら、気持ちよさそうに日向ぼっこを楽しんでいた。
ゆるやかに雲が流れゆく空をぼうっと眺めていると、前の道を見覚えのある人が通りかかった。
「あれ、この前のおばさん」
何気なくノートルは声を掛ける。おばさん――マーザはその言葉に反応して、「あ、また言ったわね!」と怒鳴りながらカウンターにずかずかと歩み寄ってきた。
その様子に、どうやら元気そうだなとノートルは心の中で安心する。
マーザはノートルを見て、満足そうに笑った。
「まぁいいわ。あなたの占い、見事に外れたわよ。あれから三日もたたないうちにすっかり良くなったわ」
あの後の経過を知らなかったノートルは素直に喜んでにこりと笑った。
「そうですか。そりゃよかった」
「残念だったわねぇ、残りの九十ゴールド」
皮肉げに笑うマーザに、ノートルはにこにこ笑ったまま首を振った。
「いりませんよ、そのぐらい。充分楽しませてもらいましたからね」
意味ありげにそういったノートルに、マーザは不思議そうにしながらもあらそう、と応じる。
「ずいぶんとサービスがいいじゃない。私には何が面白いのかさっぱりわからないわ」
そう言いながら大袈裟に肩をすくめた。
「まぁ、せいぜい当らない占いを続けることね」
その言葉にノートルは固まって目を見開いた。マーザは言うことは言ったのか、満足そうに元来た道を戻っていく。
当らない占いか。
心の中で呟いて、ノートルは苦笑した。そうだな、それもいい。どうせ悪い結果ばかり見るなら、当らない占い師で俺はいい。
気がつけば空はもう赤く染まり始めていた。ノートルは固くなった身体を伸ばして、もう一度空を見上げた。
「さてと…今日はこの辺で店じまいとするか」
そう呟いたノートルの表情は、晴れ渡ったこの日の空のように穏やかだった。
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