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■File:6 結衣の退部!? 呪いに脅える男子生徒を守護せよ!■ □side-K□

 あのトラック事故から数日が過ぎた。後から分かったことだが、あのトラックは校舎の改修工事で使用していたトラックで、作業者のミスでギアがドライブに入りっぱなしになっていたらしい。トラックが衝突した渡り廊下にも補修の手が入ることとなり、当分校舎の改修工事は終わりそうになかった。
 そして、トラシュー部にはようやくいつもの平和が戻ってきていた。幸は椅子に座って少年漫画を読み、孝也はパソコンに向かって仕入れた情報の整理をしていた。雛子は緩くパーマのかかった毛先を弄び、時鳴は自らの刀を柔らかな布で丁寧に磨いている。その横で結衣は占いの本をぱらぱらとめくり、明良はそんな皆のために、お茶のお代わりを注いでいるところだった。
 最近、トラシュー部には新たな備品が増えた。電子レンジ、コーヒーメーカー、そして今明良が手にしている新しい湯呑と急須のセット。先輩たちはニヤニヤしながら「申請してた部費がようやく降りたんだよなー」と言っていたが、そもそもこの部に部費が出ていたというのは明良は初耳だった。
「藤岡智弘と清野彩は、どうやら仲直りしたらしいな」
 と、パソコンのメール画面をクリックした孝也が言った。幸はうげっと蛙がつぶれたような声を出した。
「マジかよ。あいつ、あんだけされといてよく平気だな」
「世の中には色々な人間がいるということだな」
「俺にはぜってー無理だね……お、サンキュ、アキ」
 明良から湯呑を受け取って、幸はずず、とお茶をすすった。
「でもよかったよなー、ユイが戻って来て。な、アキ」
「え?」
 幸の言葉にきょとんとした明良を、雛子がくすくすと笑いながらからかった。
「アキったら、ユイがいなくなってそれはもう酷かったんですのよー?」
「え、そうなんですか? そうなの? アキちゃん」
「ひ、ヒナ先輩っ! 勘弁してくださいよ!」
 あまりの恥ずかしさに明良が慌てて否定しようとした時、雛子に渡そうとしていた湯呑が手から滑った。

 べちゃっ!!!

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!! アキっ!!!」
「ごごごごごごめんなさい!!!!!」
「ふ、拭くもの! 何か拭くものっ!!」

 これにて、一件落着。


 一方その頃。
「くそ、トラシュー部め……絶対につぶしてやる……!」
 真っ暗な生徒会室で、金城は憎しみもあらわに一人呟いたのだった。

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