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■File:6 結衣の退部!? 呪いに脅える男子生徒を守護せよ!■ □side-F□

 幸たちが途方に暮れている頃、学校の中庭では、結衣と三人の女生徒がベンチに座って歓談していた。上機嫌に話す女生徒たちに挟まれながら、しかし結衣はどこか上の空だ。
(アキちゃん、大丈夫かなぁ……)
 そんな思いがよぎる。明良と話さなくなってからかれこれ三日が経ってしまった。明良は結衣が迎えに行くよりも前に家を出るようになってしまったし、クラスでも別の友人と喋っていてなんだか声をかけづらい。
 明良とこんなに一緒にいなかったのは、長期休みに家族で旅行に行く時以外初めてではないだろうか。何だか新鮮な気がする傍らで、結衣はある種の物足りなさと、明良は無事だろうかという不安感を募らせていた。
 無事だと分かっていても、どうしても心配になってしまう。結衣はため息をついた。
「ユイさま? どうしました?」
 女生徒の一人、清野彩(せいのあや)が、ショートカットの髪を揺らして結衣の顔を覗き込んだ。その声に結衣は我に返ると、慌てて笑顔で取り繕った。
「あ、ううん、何でもないの。それで、何の話だったっけ?」
「ユイさまの扱う占術のお話ですよー」
 と、二人目の女生徒、橋本小夜子(はしもとさよこ)がおっとりした声音で言った。その隣で小夜子の友人である源口春美(みなぐちはるみ)がこくこくとうなづく。
「ごめん、そうだったねっ! えっとねぇ…」
 結衣が話の先を思い出そうと視線を上げた時、中庭に面した渡り廊下を、明良と見知らぬ男子生徒が歩いていくのが見えた。
「アキちゃん……」
 明良とその男子生徒は何やら笑いながら話をしていた。新しく出来た友達だろうか。それとも……
 どちらにしても、結衣は明良が一人ではない事に安心し、同時に自分はもういらないのかもしれない、という一抹の寂しさを覚えた。
「……さない」
 隣からかすかな呟きが聞こえて、結衣は隣に座っている彩を見た。彩は明良と男子生徒の方を強張った顔で食い入るように睨みつけている。その鬼気迫る様子に、結衣の背筋をぞくりと冷たいものがかけあがった。
「……彩ちゃん?」
 結衣が恐る恐る彩を呼ぶと、彩はびくりと肩を震わせ、その顔に取りつくろうような笑顔を浮かべた。
「あ、な、何ですか? ユイさま」
「……ううん、やっぱなんでもないや。ごめんね、話の続きをしよっか」
 彩は何事もなかったかのように笑顔でうなづいた。その様子からは先程の鬼気迫る雰囲気は微塵も感じられない。
 結衣は何となくそれを不安に思いつつも、再び話を始めたのだった。


 そんな女四人の様子を、中庭の陰から見ている者があった。
「ふふふ…全ては計画通りだな……」
 影は満足げにそう呟いた。その様子は、傍から見たら変質者と間違えられてもおかしくない。
「見ていろよ、トラシュー部…かならずつぶしてやるからな」
 影は怪しい笑い声を洩らしながら、身をひるがえして中庭を後にした。

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